ポリカーボネート(PC)樹脂に金属の被膜を施す技術です。PC樹脂は透明性を持つ素材ですが、メッキ処理を施してもその透明性を保ちながら、金属的な外観を加えることができます。この特性により、デザイン性と機能性を兼ね備えた製品が可能となり、光学機器やレンズケースなど、装飾的・機能的な要求に応じた幅広い用途で活用されています。
ポリカーボネート(Polycarbonate、以下PC)は、エンジニアリングプラスチックの一種で、優れた透明性と耐衝撃性を持つ素材です。光透過率が高く、ガラスに匹敵する透明度を持ちながら、衝撃にはガラスの約200倍の強度を誇ります※。
また、PCは耐候性にも優れ、紫外線や湿度による劣化が少ないため、屋外での使用に向いています。加工性が高く、射出成形や切削加工など多様な加工方法に対応できるため、複雑な形状の部品製造にも適しているのがメリットです。さらに、自己消火性があり、燃えにくい特性を持つため、電気・電子機器の外装部品としても利用されています。
一方で、PCは有機溶剤や界面活性剤に対する耐性が低いことから、応力腐食による割れが発生しやすいというのが課題です。また、表面硬度がそれほど高くないため、擦れや引っかきにより傷がつきやすいという特徴もあります。こうした特性を踏まえた上で設計や処理を行うようにしてください。
PCはその特性を活かし、カメラや眼鏡のレンズ、DVDの基板、車のヘッドランプ、防弾素材など、さまざまな用途で活用されています。
※参照元:湯本電機(https://www.yumoto.jp/material-onepoint/plastic-polycarbonate/)
PCにメッキを施すことで、素材の特性をさらに強化し、機能性やデザイン性を向上させることができます。
PCにメッキを施すことで、金属の質感を維持しながら軽量化が可能です。従来、金属で製造されていた部品をPCに置き換えることで、全体の重量を削減します。輸送コストの削減や取り扱いの容易さも向上。加えて、金属材料よりも成形が容易なため、製造コストの低減にもつながります。
PC製品の表面にメッキを施すことで、高級感のある金属光沢が得られます。消費者向け製品では、デザイン性の向上が市場競争力を高める要因の一つです。自動車の内装部品や家電製品などでは、金属調の質感を求められることが多く、PCのメッキ加工が有効に活用されています。
PCはもともと傷がつきやすい素材ですが、メッキ加工を施すことで表面硬度が向上し、耐摩耗性が改善されます。また、適切なメッキ処理を施すことで、PCの弱点である有機溶剤や薬品に対する耐性が向上。より幅広い環境での使用が可能となります。
PCは非導体であるため、電子機器に使用する場合、外部の電磁波干渉を防ぐための対策が必要です。メッキを施すことで、表面に導電性を持たせ、電磁波シールド効果を付与できます。電子機器の安定した動作を確保し、電磁波ノイズ対策が求められる製品への適用が可能です。
PCのメッキ加工は、以下のような分野で活用されています。
PC樹脂メッキは、自動車産業においても多くの部品に採用されています。主に以下のような用途があります。
PCは高い透明性を持つため、光学分野でもメッキ加工が活用されています。
PC樹脂メッキは、産業機器や家電製品の耐久性・デザイン性を向上させる目的でも使用されます。
PC樹脂メッキは、電磁波シールド機能の付与、デザイン性向上、耐久性の強化など、多岐にわたる目的で利用されています。適切な加工技術を選択し、製品の特性や用途に応じた最適なメッキ処理を施すことで、製品価値の向上を図ることが可能です。
塚田理研工業は、PC素材を用いた消防車のパネルカバーに対し、電磁波ノイズ対策として電磁波シールドメッキを施した実績があります。この加工により、パネルカバーの取付面に金属と同等の高いシールド効果を付与しました。薄いメッキ層で高いシールド効果が得られるため、さまざまな製品で採用されています。
PCはエンジニアリングプラスチックの一種であり、耐衝撃性や高い透明性、耐熱性などの特性を持つ一方、導電性や熱伝導性が低いため、電磁波ノイズ対策が求められる部品にはそのまま使用することが難しい場合があります。塚田理研工業は、PCへのメッキ加工により、金属と同等の機能をプラスチックに付与し、製品の軽量化や製造コストの低減を実現しました。
アトライズヨドガワでは、ポリカーボネート(PC)とABS樹脂を用いた二色成形と、耐久性を高めるホットスタンプ加工を組み合わせた事例が紹介されています。
この事例では、自動車のセンターコンソールダイヤルの製造において、PCとABSの二色成形を採用しています。透明部分にPCを使用し、乳白色部分にABSを用いることで、メッキを施さない部分と施す部分を明確に分け、色彩の境界を精密に表現。さらに、ダイヤルの側面には手触りの良い模様を施し、天面には透明で耐久性の高いフィルムをホットスタンプ加工することで、傷つきにくさを向上させています。
加工を行うことで、製品の外観品質を高めるとともに、使用時の快適性や耐久性を向上させることが可能です。自動車の内装部品など、頻繁に操作される部品においては、これらの加工技術が有効とされています。
富士合成では、サーバーのフロントパネル部品を対象に、従来の板金加工から樹脂成形への置き換えを行い、メッキ塗装を施すことで、外観品質の向上とコスト削減を実現しています。
元々、板金加工で製作されていたサーバーのフロントパネル部品を、ABSやPCといった樹脂材料で成形し、メッキ塗装を施すことで、金属部品と同様の外観を再現しました。この手法により、製品の外観品質を維持しつつ、製造コストの約40%削減、製品重量の約50%削減を達成しています。
ポリカーボネート(PC)のメッキ加工は、軽量化、デザイン性向上、耐摩耗性・耐薬品性強化、電磁波シールド効果の機能性を付与できるため、電子機器や家電、産業機器などに活用可能です。特に自動車や通信機器部品では、コスト削減や機能向上のためPCメッキが採用されており、製品の高性能化に貢献しています。
このサイトでは、「高品質な内外装部品の量産」「電子機器への電磁波シールド」「アクセサリーのニッケルフリー」という3つの目的別に、おすすめのプラスチックメッキ加工メーカーをご紹介しています。自社のニーズに合ったメーカーを見つけるために、ぜひご活用ください。
製品の性能や耐久性を高めるためには、自社のニーズに合ったプラスチックメッキ加工会社を選ぶことが重要です。
目的に応じたおすすめの加工会社を厳選してご紹介します。
75年以上※にわたりめっき加工を手掛け、自動車メーカー向けにドアハンドルや内外装部品にめっき。耐食性を付与する3層のニッケルめっきを採用し、耐久性・品質の高い加工を実現。様々な加飾バリエーションへの対応とエレベータ方式設備、画像検査システムや膜厚シュミレータを併用し、生産性と品質保証の両面を向上しています。
電子基板メーカー向けのプリント配線板加工で培った技術をもとに、無電解銅と無電解ニッケルを使用した電磁波シールドめっきを提供。精密機器のハウジングやコネクタに金属並みの導電性を持たせ、電磁波ノイズを遮断。
軽量化とノイズ対策に役立つメッキ加工を提供します。
創業から腕時計の外装部品製造に携わり、精密な仕上がりと高級感を追求。ニッケルフリー仕様で加工をするため、肌に優しく、多彩な色調や光沢・サテンの質感を表現が可能。
時計の外装のほか、リングやペンダントなど、デザイン性と安全性を兼ね備えた製品を実現します。
※参照元:2025年2月3日調査時点 白金鍍金工業公式HP(https://www.siragane.co.jp/)